解説
宮城県本吉郡南三陸町(旧歌津町)を襲った津波の様子を捉えた映像。地元で理容店を営んでいた及川勝也氏による撮影。地震発生から約20分後、伊里前湾に面し、街をほぼ東西に横断する国道45号線(歌津バイパス)歌津大橋の上、橋梁(りょう)の東端付近から、撮影者はカメラを回し始めた。午後3時15分すぎ、徐々に湾内に入り込んでくる潮流を捉える。午後3時20分ごろ、橋の北側に添う堤防付近には、まだ不安そうに湾の方を見つめる人影も確認できる。しかし、その数分後に状況は一変。波は、水位と勢いを増し、あっという間に堤防からあふれ出た。尋常ならざる状況に危機を察し、撮影者もあわててバイパス横の高所に駆け上がる。激流が、みるみるうちに街へとなだれ込み、家々が次々と押し流されていく。橋の周囲(西側)を注視していた撮影者らを、さらに信じられない事態が襲う。橋の逆方向(東側)、まさに撮影者らの背後から、突然、激しい水流が現れたのだ。不意を突かれた撮影者のすぐ真横、わずか1メートルほど下を、波がどんどん通り過ぎていく。バイパスが東から西に流れる巨大な水路と化し、みるみるうちに、歌津大橋の上部(路面)を海水が覆い尽くしていく。驚がくし、さらに高台へと避難した撮影者らは、街の北側・高台にある伊里前小学校付近にまで海面が達している様子を目撃する。「全滅だ...」と悲痛な声も響く。3時半ごろ、今度は引き波へと変わり、逆流で湾方向へと運ばれる建造物が、橋などの障害物にぶつかり、すさまじい音を立てながら、粉々に破壊されていった。波が去った3時45分ごろ、高台から降りた撮影者は、街の各所を回り歩き、その被害状況をカメラに収めていく。橋の東側・管の浜地区にある魚竜館(南三陸町水産振興センター)、橋の南西にある伊里前川防潮水門...街のランドマーク的施設の大きく傷ついた姿が捉えられた。午後4時ごろ、降雪も激しくなる中、海抜約15メートルの伊里前小学校まで、波が達していたことを確認する。ほぼ同じ標高にあるJR気仙沼線・歌津駅にも、津波の痕跡が残っていた。午後5時すぎ、再び伊里前小学校に戻った撮影者。車など漂流物の残骸がひしめく校庭。そこから一望する街並みは、凄惨(せいさん)な光景そのもの。公民館も、保健センターも、銀行(仙台銀行歌津支店)も...建物という建物は大きく損壊し、おびただしい量のがれきや泥がまとわりついている。撮影を始めた歌津大橋は、両端をわずかに残して、橋床のほとんどが崩落し、頭部をもぎ取られた橋脚の異様な躯体(くたい)が、飛び石のように海岸線に点在していた。
データの提供元
3.11 忘れない FNN東日本大震災アーカイブ
東日本大震災時の地震、火災、津波などの映像を収録したウェブサイト。FNN(フジニュースネットワーク)加盟局の映像を中心に収録。
最終更新日
2024/02/21